UP-Cの概要
UP-Cは、主に6~12歳前後の子どもを対象とした集団療法です(個人療法として実施することも可能です)。週1回、90分のセッションを、全部で15回行います。親(保護者)の参加が必須です。基本的には、毎回最初に全員で集まり、その後子どもグループと親グループに分かれ、最後に再集合するという流れで行われます。
UP-Cでは、子どもたちは以下の5つの「感情探偵スキル」を学びます。こうしたスキルを学んで練習し、身につけることで、この先つらい状況に直面したり、つらい感情を感じたとしても(こうした感情に関する困りごとを「感情事件」と呼びます)、スキルを用いて対処し、最終的には、自分が望む生き方ができるようになっていきます。一方親は、子どものコーチになれるように、子どもたちが学ぶのと同じスキルを学びます。それに加えて、子どもを育てるうえであまり役に立たないと考えられている4つの感情的な養育行動を、より役に立つ反対の養育行動に変えていきます。
感情探偵スキル
現場検証スキル
不安になったり落ち込んだりイライラしたりすると、感情に圧倒されて、何が起こっているのかわからなくなることがよくあります。そうすると、どう対処すればよいのかもわからなくなってしまいます。そこで、現場検証をして、何が起こっているのか把握する練習をしていきます。
犯人推理スキル
このプログラムでは、感情事件を起こしている犯人として、4匹のモンスターを紹介します。たとえば、「キマリス」というモンスターは、証拠もないのに「〇〇に決まリッス!」とささやいてきてつらい感情を引き起こします(例:テストで失敗するに決まっている)。そこで、どのモンスターが感情事件を起こしているのかを推理していきます。
証拠集めと作戦計画スキル
犯人推理スキルを使って、感情事件を起こしている犯人を推理したら、その犯人が言っていることが本当かどうか確かめるための証拠を集めていきます。多くの場合、犯人が言うことは間違っていたり極端だったりします。また、感情事件が起きてつらくなっているときは、いつも同じ方法で事件を解決しようとして、うまくいかないことがよくあります。そこで、作戦計画スキルを学んで、役に立つ作戦を考えられるようにしていきます。
対決スキル
犯人がよく現れる場所にあえて出向いたり、犯人がよく現れることをわざとやったりして、犯人をおびき寄せ、対決していきます。たとえば、レストランで自分で注文しようとすると「ダメェ~ダ」というモンスターが現れて、「絶対ちゃんと伝わらないよ」とささやいてくるのであれば、あえてレストランで自分で注文してみます。こうした対決を繰り返しているうちに、モンスターは少しずつ弱っていきます。
名探偵スキル
感情事件は、プログラムが終わった後も必ず起きます。でも、プログラムを最後までやりきれば、名探偵になり、学んだスキルを使って自分で感情事件を解決できるようになります。
感情的な養育行動 vs 反対の養育行動
批判 vs
正の強化と積極的無視、共感
感情障害を持つ子どもは批判に敏感で、曖昧な表現や言葉でも批判されたと受け取ることがあります。批判には、子どもの失敗に対してネガティブな言葉をかけるといったわかりやすいもの以外にも、ため息をつくといった非言語的なものや、「怖がることないよ」のように子どもが感じている感情を否定することなども含まれます。こうした行動に気づいたら、子どもの感情や体験に対して共感を示すようにしていきます。また、不適切な行動は批判するのではなく意図的に関心を向けないようにし(積極的無視)、子どもの適切な行動に注目することで(正の強化)、本来とってほしい行動を増やしていきます。
一貫性のなさ vs
一貫した強化と罰
困難な状況は一人ひとり異なります。その子にとって、困難な状況に取り組んだり、効果的に対処した時には、毎回十分にほめることが重要です(効果的なほめ方は一人ひとり異なります)。しかし、親は、子どもが小さな一歩を踏み出していることに気づかず、ほめ損なうことがあります。また、他の子どもには「ふつうに」できそうなことだと、ほめる必要などないと思うこともあります。こうした対応は、子どもが困難な状況に取り組んだり、効果的に対処する可能性を減らしてしまうかもしれません。一方、子どもの不適切な行動に対して一貫した対応をしないことも、その行動は許されることがあると子どもに教えることになり、その行動は維持されてしまいます。そのため、ほめるにしても罰する(例:子どもが好きなことを一定期間できなくする)にしても、一貫した対応が重要です。
過干渉/過保護 vs
健全な自立の促進
親が子どもを守りたいと思うのは自然で適切なことです。しかし、実際には危険でも恐ろしくもない状況で親が子どもを守ろうとすると、子どもはその状況は危険で、自分では対処できず、避けた方がいいのだと学んでしまいます。その結 果、意図せず子どもの不安をより高め、動けなくしてしまうことがあります。そのため、子どもが本来自分で乗り越えることができること(例:年齢相応の活動)は、少しずつ子どもが自分でできるようになるように、手助けしていくことが重要です。
強い感情と回避のモデル vs
健全な感情体験のモデル
子どもは身近な人間を見て学びます。そのため、子どもの前で、過度に強い感情を表出したり、不安になることをたびたび避けたり、極端な考えを口にしたりすることによって、親は気づかないうちに、自分と同じように感情に反応するよう、子どもに教えているかもしれません。子どもだけでなく親にとっても感情を感じることは自然でむしろ適切なことです。
感情をなくそうとするのではなく、自分が感じている感情を認め、言葉にし、適切に対処する様子を子どもに見せることで、健全な感情体験のモデルになる練習をしていきます。
